発光生物学を始めたばかりのものにとっては、いきなり論文を読むことは難しいです。幸いにも日本にはたくさんの発光生物入門書が出ています。しかし、そういった本の中には、あり得ないようなマチガイの温床となっているものも多いです。今回はそれらを避けて効率的に発光生物学を学ぶためのガイドマップを作成してみました。
①発光生物学の入り口 中高生向けレベル
・大場裕一(2013)『ホタルの光は、なぞだらけ』(くもんジュニアサイエンス)
・大場裕一(2016)『恐竜はホタルをみたか』(岩波科学ライブラリー)
この2冊を読めば、発光生物全般についてそれなりに詳しくなれる。どちらも、ホタルだけではなく様々な発光生物が登場する。平易な文章で書かれており、すぐに読める。この2冊以外の入門書には、誤りだらけなのでおすすめしない。
②発光生物学 一般向けレベル
・大場裕一(2021)『光る生き物の科学』(日本評論社)
簡単ではないが、読み応えがあり、これを読破すれば最新の研究までかなりカバーできる。①よりもだいぶ発光生物研究が進む。余裕があれば、詳しすぎる脚注まで読むとなお良い。2000年以降の原著論文を当たることができる最初の本。
・羽根田弥太(1972)『発光生物の話』(北隆館)
古い本だが、日本語で発光生物の正確な知識を習得できる貴重な一冊。最新の知識は得られないが、“勉強”というより読み物として楽しめる。
・下村脩(2014)『光る生き物の話』(朝日選書)
ノーベル賞受賞者下村による発光生物の解説本。上記の本は生物学よりだが、生物発光の化学的な知識を身につけるのに良い。難しいところはあまり気にせずに、読むと良い。
③発光生物学 辞書として使う
・大場裕一(2022)『世界の発光生物』(名古屋大学出版会)
・羽根田弥太(1985)『発光生物』(恒星社厚生閣)
発光生物を分類群ごとにまとめた2冊でどちらも、必読。普段は、分類ごとに発光生物を調べたいときに使う。羽根田のほうは、大場に比べて属リストがかなり貧相であるが、ここにしか書かれていないオリジナルな記述も多いので、読んで損はない。文献もかなり多く、この2冊を持っていれば、普段困ることはない。これらと並べる本をいつか出したい(野望)。
④発光生物学 発光写真がみたい
・大場裕一監修(2015)『光る生き物 DVD付き』(学研の図鑑LITE)
・大場裕一(2015)『光る生き物はなぜ光る?』(文一総合出版)
・大場&宮武 光る生き物シリーズ3冊「海・陸・きのこ」
どれもきれいな発光写真が載っていて眼福だが、学研のものは他には載っていないマニアックな発光写真がかなり多く見ごたえがある。文一総合出版のものは、写真だけではなく採集方法や発光生物の入門知識がイラストと一緒にあるのでわかりやすい。
⑤発光生物学 発光動画がみたい
・BBC(2016)『Life that glows』(吹替版 地球ドラマチック 発光生物 神秘の世界)
・NHKスペシャル(2016)『ディープオーシャン 光る生物たちの王国』
・東京ズーネット(2017)『発光生物オンパレード──キラ・ピカな発光生物たち』
素人には使えない超高感度カメラによって美しく撮影された映像が満載。NHKスペシャルは普段は見れない深海発光生物の発光映像も充実している。
東京ズーネットの動画は、こちらから見れます。ほかでは見れないような生物の発光動画を撮影されていて、素晴らしいです。発光動画の撮影ってめっちゃ難しいんですが、それをあまり感じさせないほどクオリティが高い。
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