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長崎丸に乗って深海へ

  • 執筆者の写真: Kanchi
    Kanchi
  • 5月23日
  • 読了時間: 8分

更新日:5月24日

先日長崎大学の実習船、長崎丸に乗って深海調査に行ってきました。那覇出港だったので、仙台空港から3時間ほどかけて那覇空港へ(直通便があって良かった)。那覇についてすぐに暑さと湿度の高さに驚きました。空気が肌にまとわりついているようです。


翌朝出港だったので、停泊中の長崎丸で一晩を明かしました。今回の調査は長崎大と琉球大の乗船実習にお邪魔させていただく形で乗ったので、長大生や琉大生も一緒でした。那覇から宮古島までサンプリングを行いながら移動し、4日かけて向かいます。宮古島で1泊してから那覇へ直帰するというスケジュールでした。


はじめての乗船調査だったので船酔いを心配していましたが、アネロンがよく効いたのか全く酔いませんでした。ベタ凪だったとはいえ、ダウンしている学生もちらほらいたので、僕の酔い耐性はそこそこあるだと言えそうです。ちなみに日本の発光生物学者は船酔いに弱いというジンクスがあります(N=2)。



いざ出港!天気がとても良かったです。
いざ出港!天気がとても良かったです。

初日は那覇を出て、1日かけて翌日のサンプリングサイトに向かうだけだったので、ゆっくり船の雰囲気になれることができました。我々と同じく余席利用で美ら海水族館の飼育員さんが2人いました。年も近くてすっかり仲良くなりました。船の上はできることが限られているので、すぐに親しくなれる気がします。船のご飯は早くて朝は6時半、昼は11時半、夜は16時半に出てきます。

初日の夕飯!キントキがめっちゃうまそう!
初日の夕飯!キントキがめっちゃうまそう!

船のご飯はどんなものかと楽しみにしていましたが、1週間毎日予想を上回る美味しさで大満足でした。


夕食を食べた後は夕日を見に行きました。もう沖縄本島は見えません。360°遮るものがないなか見る日没はとても美しかったです。

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さて、いよいよ調査です。まずはCTDを沈めて深海から海水をサンプリングします。沈めながらクロロフィル濃度や水温、塩分などを測定できる優れもので調査船には必ず積んであるようです。

採水して帰ってきたCTD。おかえりー
採水して帰ってきたCTD。おかえりー

そのあとは、目玉のトロール(底引き)です。ここが興味があるかと思いますが、どんな魚が採れたかは見せてはいけないような気もするので、写真は載せないことにします。

真ん中にある網をトロールに使います。
真ん中にある網をトロールに使います。

今回はそこまで深くおろしていないので、The深海魚みたいなものは少なかったのですが、大量に魚やイカがあがってきました。ユウレイクラゲも入っていました。研究に使わない魚は実習生によって大量に捌かれて夕飯になったのでした。


夜間の停泊中は船員や学生と釣りをしてマグロを狙ったりしました。夜の海をじっと見ているとトビウオがヒレを広げて気持ちよさそうにぷかぷか浮いていました。愛媛大学のころの先生が授業中に言っていた話は本当だったのか、、、。気持ちよさそうに見えたのも束の間、トビウオちゃん達は大型魚に追われてパニック状態で滑空しまくっていました。たまに船にぶつかって来るやつもいた。


2日目からもドレッジを曳いたり、CTDで採水したり順調に実習は進みました。発光生物の話をしていませんでしたが、底生のものがたくさん採れましたよ。論文でしか見たことのない発光生物たち、さすが感動しました。深海から上がってきた生物が死なないうちに急いで発光写真を撮影していると、「左舷に野生のジンベエザメ。」と放送が!疲労が溜まってきた体でしたが、一気に熱くなったのがわかりました。すぐにカメラの録画停止ボタンを押そうとしましたが、なかなか押せなくて戸惑っていると、指導教員の別所さんからも「南條くん!!」といわれ暗室からダッシュでようやく甲板に出ると、、、、

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うおおおおお!!!!!野生のジンベエザメ!!!!4mはありそうな巨体がゆらゆら泳いでいるではありませんか!ジンベエザメはもっと大きくなりますが、4mでも十分大きく感じました(動画)。


思わぬ遭遇に心臓の高鳴りがしばらく収まりませんでした。夕日も美しく、みんなこの日はぐっすり寝られたと思います。

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さて5日目に宮古島に寄港して久しぶりの陸地を満喫しました。島に近づいたタイミングでようやく電波がつながりました。先生たちは100件メールが来ていると言っていてゾッとしました。乗船中、お世話になった美ら海水族館の飼育員さんとは宮古でお別れでした。生き物のキープ方法や梱包方法など勉強になりました。

宮古島。奇しくも指導教員の別所さんと同じポーズをしています。
宮古島。奇しくも指導教員の別所さんと同じポーズをしています。
池間島より(写真中央道路でつながった先が宮古島)。海がめっちゃ綺麗!私のお気に入り柏島(高知)も流石にこれには勝てません。
池間島より(写真中央道路でつながった先が宮古島)。海がめっちゃ綺麗!私のお気に入り柏島(高知)も流石にこれには勝てません。

「発光生物学者は如何なるときも発光生物探しをやめません。」

これは僕の恩師のひとりである中部大学の大場先生が以前研究室のホームページで書いていたセリフです(当時大学生の私は感動していた)。ということで、陸についたら陸の発光生物を探そうじゃありませんか!


さっそく、ちょっとした森に探検にいきます。

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オカヤドカリを発見!この子は光りません。天然記念物なのでお触りも禁止。たくさんいたので、踏まないように歩くのが大変でした。
オカヤドカリを発見!この子は光りません。天然記念物なのでお触りも禁止。たくさんいたので、踏まないように歩くのが大変でした。

森を探索しても蚊に刺されるだけで目ぼしいものはオカヤドカリ以外何もいません。

お腹が空いたので、宮古そばで燃料補給。海を見ながら食べるそばは最高でした。それよりも揺れずに食事ができることが嬉しかったかも。

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さて、昼食を食べたら再び発光生物探しを再開です。宮古島を適当に進んでいると、良さげな場所を発見。

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ちょっと乾燥していますが、蚊も少ないし、期待できそう。と思って落ち葉をめくり始めて1分で見つけました。タカクワカグヤヤスデです!暖かい地域に生息する光るヤスデで、宮古島での生息は大場研卒業生の卒業旅行の際に確認されました(どんな卒業旅行?)。とってもキュートな顔をしているので、ぜひここからご覧になってください。

大場裕一・鈴木義基・金郁彦(2017)発光性倍脚類タカクワカグヤヤスデParaspirobolus lucifugusの宮古島からの新産地記録.豊田ホタルの里ミュージアム研究報告書 9: 1-5.

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他にもこんなものが!ヤエヤマサソリです。数年前まで日本にサソリが生息しているとは知らずにびっくりしたのを今でも覚えています。残念ながらサソリは光りません(蛍光はするんだけどね)。

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採集は夕方に切り上げて、夕食まで時間があったので私は髪を切りに行きました。なんで宮古島まで来て髪なんか切るんだとお思いでしょう。実は、小学生のころずっと通っていた近所の床屋さんが15年前に宮古島に引っ越したので、久しぶりに会いに行くことにしたのです。なんの連絡もなしに行ったので覚えているか不安でしたが、名前を言うとすぐに思い出してくれて成長を喜んでくれました。床屋さんや美容師さんの記憶力には毎回脱帽しています。素晴らしい床屋さんなので、宮古島に御用のある方はぜひ。


さてさて。宮古島で夕飯です。お店の前に可愛い子ヤギの置物が置いてある店に入ることにしました。

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宮古島で夕飯に頂くのはヤギ刺しです。馬刺しも食べたことがない私ですが、馬より先にヤギを頂いてしまいました。読者の方にヤギ好きがいらっしゃるような気がするので、ヤギトークはこの辺で辞メェ~ときます。久しぶりのビールは最高でした。実習生以外は禁酒ではないのですが、船の上で酔ったらどうなるかわからなかったので、持ち込みませんでした。


翌日は昼まで時間があったので、琉大の先生のシュノーケリングに同行させていただいました。私は荷物番をしていたのですが、適当に磯で石ひとつをひっくり返したら、とある発光生物を見つけました。

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ヨコスジタマキビモドキという幻想的に光る巻き貝です(発光のようす)。宮古島初記録かと思ったけど、すでに知られているようでした。

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昼まで時間があったので下地島の通り池も見に行きました。宮古諸島には池も川もありませんので、これは水中で外の海とつながっているというわけです。何でもここにはレアな海綿が生息しているとか。

最後は昼ご飯に讃岐うどんを食べて、デザートに島バナナシェイクを飲んで宮古島を後にしました。

宮古島さようなら!蚊に食われたけど良い場所でした。また来よう。
宮古島さようなら!蚊に食われたけど良い場所でした。また来よう。

帰りはサンプリングは行わずに、那覇に直帰でした。現在のところ宮古島と那覇を結ぶフェリーは存在しないようなので、これは限られた人にしかできない経験ですね。

夜まで時間があったので、先生たちがセミナーをやってくれました。帰りの船はスピードを出していたので結構揺れました。揺られながら話すのはかなり大変そうでした。画面を見ると酔いそうになりますが、研究の面白さで緩和されていたと思います。

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翌朝9時に那覇に入港しました。外を覗くと宮古島で別れた美ら海水族館の飼育員Mさんが荷物の受取に来ていました。宮古島から発送した生物たちは皆無事に水族館に到着したようでした。飼育員Sさんはお休みなのにわざわざ来てくれました。5日しか話していないのに、随分と前から知っている友達に再会したような感覚でした。有り難いことに那覇空港まで送っていただきました。最後に那覇空港で沖縄そばを食べて仙台に帰りました。帰宅後、冷蔵庫で大事にとっておいた「ホヤぼーやビール」はそれはそれは美味しかったです。


今回の調査で採集された生物たちは展示に回る可能性があるようなので、行く予定がある人は深海生物コーナーで探してみてください。私に「光らないからいらないや」と見捨てられた子たちが水族館で元気に育ってくれることを祈っています。次に美ら海水族館に行ったら挨拶と謝罪にいこう。。。

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