この記事はPart1の続きです。まだ読んでいない方は、こちらから読めます。
さて、高校3年生のときに発光生物に出会った私ですが、そこから一気に発光生物のことを勉強することは出来ませんでした。理由は単純で、浪人していたからです。それでも、息抜きとして何冊か本を読みました。
下村脩(2010)『クラゲに学ぶ: ノーベル賞への道』長崎文献社
サラルイス(2018)『ホタルの不思議な世界』エクスナレッジ
本を読んだり、ネットで調べてみると現在、発光生物研究を精力的に研究しているのは中部大学の大場裕一先生らしいということも分かってきました(ルイスの翻訳監修をしていた)。やがて、受験が終わると、メルカリで買った発光生物の本を見ながら、自分でまとめ直すという作業をしていました。受験という足かせが外れたあと、発光生物のことを調べることが何より幸せな時間でした。
しかし2020年の時点では、発光生物学の良書はほとんど無かったので、発光生物のことを生物学の側面から詳しくなりたいのに、何をやれば良いかイマイチわかりませんでした。ちなみに下村先生の本は生物発光の化学に関する記述が多いので、生物に詳しくなることは出来ませんでした。
大学に入学したばかりのころ、大学図書館にふらっと立ち寄ってみました。PCで蔵書検索ができたので、試しに「発光生物」と打ち込んでみました。すると、一番上に1985年に出版された一冊の本が出てきました。その本は、書庫の奥にあるようだったので、出入りを許してもらって探しに行きました。古本の匂いで充満した薄暗い書庫から、ようやく本を見つけて手に取ってみました。どうやら羽根田弥太という方が書いた本のようです。函から出して、パラパラと覗くと衝撃が走りました。この本は発光生物を生物学の観点から体系的にまとめており、まさしく私がずっと探し求めていたものだったからです。はじめは気づきませんでしたが、どうやら私はこの本の存在は知っていたようです。Amazonで発光生物と調べると、この本がヒットするのです。ただし、表紙の写真もなく高価だったので、スルーしていました。下村先生の論文のなかにも、この本の背表紙がちらっと写っており、気にはしていました。
さっそく本を借りて勉強を始めました。聞いたこともない生物がたくさん出てくるので、スマホ片手に写真を調べながら読み進めていきました。この本には、1985年の時点で出ていた発光生物に関する本が何冊かまとめられていたので、それらの本も図書館や古本屋で探して読みました。それらも読んでいくと、次第に中部大学の大場先生とお話してみたいという気持ちが徐々に高まっていきました。そして8月ごろにメールで研究室訪問のアポをとりました。大場先生にはそれから良くしていただいて現在に至ります。発光生物をやっている研究者・学生でも、こういう古い本を読んだことのある人は少ないです。今は大場先生が優れた本を2冊*も出してくださったおかげで、古い本を読む必要性はほとんど無くなりました。でも私にとっては身近に発光生物学に精通した人間もいなかったので、私はこれらの古い本を教師として、発光生物の基礎を学ぶことになりました。
おかげで、発光生物学の歴史についても知ることが出来て、ますます発光生物が好きになりました。発光生物研究に携わった日本人は多くないので、人の繋がりが把握しやすいのです。加えて、発光生物研究を推進してきた人たちはなぜか、その人柄も魅力的な方が多いんですよね。先人が弟子を育て上げたり、本を残したりしたおかげで現在でも発光生物の研究者が絶滅危惧種なみに希少ですが、生き残っています。とっくに絶滅しててもおかしくないのに、ちゃんと残っているのは、初学者にとって大変恵まれている状況です。一度なくなってしまうと復活させるのは簡単なことではありません。私たち若い世代も継承者として、先人たちが紡いできたバトンを受け取らなければなりません。私も既に種を蒔いていて、図書館に発光生物の良書をたくさん入れてもらいました。
最後の方は、少し脱線しましたが「発光生物との出会い Part2」はこれで終わりたいと思います。お読みいただきありがとうございました。
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